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スタンダール流女の子の口説き方(la manière stendhalienne de séduire une fille)(3)

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こんにちは。バゲットです。

スタンダール(Stendhal)の『赤と黒(Le rouge et le noir)』で、美しく高慢な侯爵令嬢マチルド(Mathilde de La Mole)は、16世紀、宗教戦争の時代の王妃マルグリット・ド・ナヴァールに憧れ、彼女のような波瀾万丈の人生を送りたいと考えています。
そのため、自分が発した侮辱的な言葉に、ジュリアン・ソレル(Julien Sorel)が激怒し、壁に掛かった剣に飛びついて鞘から剣を引き抜くと、マチルドは感動してしまうのです。そして自室に戻り、「うっとりとして(ravie)」、「殺されそうになったという幸福(le bonheur d’avoir été sur le point d’être tuée)」に浸ります。
マルグリット・ド・ナヴァール
こうして、マチルドは本当に恋に落ちてしまいました。さて、有名か否かは知らないのですが、私が大好きな場面です。
マチルドは、ジュリアンのことをあれこれと考えながら、何気なく画帳に鉛筆でいたずら書きをしています。すると描き上がった横顔が、ジュリアンにそっくりなのです。
「描き上げたばかりの横顔の一つを見て、彼女は驚き、狂喜した。それは驚くほどジュリアンに似ていたのだ(Un des profils qu’elle venait d’achever l’étonna, la ravit : il ressemblait à Julien d’une façon frappante)。『これは天の声だわ!恋の奇跡よ(C’est la voix du ciel ! voilà un des miracles de l’amour)』、彼女は熱狂して叫んだ(s’écria-t-elle avec transport)」。
マチルドは、今度は真剣に、熱中して、ジュリアンの似顔絵を描こうとします。しかし、どうしてもうまく描けません。
「彼女はとても熱心に、ジュリアンの似顔絵を描こうと真剣に努力したが、うまくいかなかった。先ほどいい加減に描いた横顔が、やはり一番似ていた(Elle s’appliqua beaucoup, chercha sérieusement à faire le portrait de Julien, mais elle ne put réussir ; le profil tracé au hasard se trouva toujours le plus ressemblant)。マチルドはすっかり嬉しくなってしまい、これこそは熱烈な恋の明らかな証拠だと思った(Mathilde en fut enchantée, elle y vit une preuve évidente de grande passion)」。
世界の文学史上有名な恋愛小説はたくさんありますが、恋に酔いしれる女の子の幸福な気持ちを、これほど生き生きと描写した場面が、他にあるでしょうか。
※      ※      ※
このようにジュリアンとマチルドは、かなり早い段階から、お互いに熱烈に愛し合っています。ところが二人とも、無意味にプライドが高かったり、つい迂闊な言葉を口にしたりして、彼らの恋はなかなか進展していきません。ジュリアンはマチルドを嫉妬させるため、好きでもない他の女性に言い寄って、何通もラヴレターを送ったりもします。
「愛し合っている男女が、愛し合っているにも関わらず、些細なアクシデントや誤解やすれ違いのためになかなか結ばれないで、読者(あるいは視聴者)をやきもきさせる物語」を「ラブコメ」と呼ぶのなら、『赤と黒』のジュリアンとマチルドのやり取りは、まさに「ラブコメ」です。
この作品が書かれたのは、1830年。今ではもう190年も昔のことですが、今読んでもすごく面白い。恋する男と女の心理は、190年を経ても、あまり変わらないのでしょう。
(了)

(註)文中の写真は1997年放映のテレビドラマ(DVDは98年)。マチルドを演じるのは、ジュディット・ゴドレーシュ(Judith Godrèche)。まばゆいばかりの美しさです。

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