サイトロゴ

レコールドフランセ フランス語学校 へようこそ!

03-3363-6603

blog

スタンダール流女の子の口説き方(la manière stendhalienne de séduire une fille)(3)

投稿日:

こんにちは。バゲットです。

スタンダール(Stendhal)の『赤と黒(Le rouge et le noir)』で、美しく高慢な侯爵令嬢マチルド(Mathilde de La Mole)は、16世紀、宗教戦争の時代の王妃マルグリット・ド・ナヴァールに憧れ、彼女のような波瀾万丈の人生を送りたいと考えています。
そのため、自分が発した侮辱的な言葉に、ジュリアン・ソレル(Julien Sorel)が激怒し、壁に掛かった剣に飛びついて鞘から剣を引き抜くと、マチルドは感動してしまうのです。そして自室に戻り、「うっとりとして(ravie)」、「殺されそうになったという幸福(le bonheur d’avoir été sur le point d’être tuée)」に浸ります。
マルグリット・ド・ナヴァール
こうして、マチルドは本当に恋に落ちてしまいました。さて、有名か否かは知らないのですが、私が大好きな場面です。
マチルドは、ジュリアンのことをあれこれと考えながら、何気なく画帳に鉛筆でいたずら書きをしています。すると描き上がった横顔が、ジュリアンにそっくりなのです。
「描き上げたばかりの横顔の一つを見て、彼女は驚き、狂喜した。それは驚くほどジュリアンに似ていたのだ(Un des profils qu’elle venait d’achever l’étonna, la ravit : il ressemblait à Julien d’une façon frappante)。『これは天の声だわ!恋の奇跡よ(C’est la voix du ciel ! voilà un des miracles de l’amour)』、彼女は熱狂して叫んだ(s’écria-t-elle avec transport)」。
マチルドは、今度は真剣に、熱中して、ジュリアンの似顔絵を描こうとします。しかし、どうしてもうまく描けません。
「彼女はとても熱心に、ジュリアンの似顔絵を描こうと真剣に努力したが、うまくいかなかった。先ほどいい加減に描いた横顔が、やはり一番似ていた(Elle s’appliqua beaucoup, chercha sérieusement à faire le portrait de Julien, mais elle ne put réussir ; le profil tracé au hasard se trouva toujours le plus ressemblant)。マチルドはすっかり嬉しくなってしまい、これこそは熱烈な恋の明らかな証拠だと思った(Mathilde en fut enchantée, elle y vit une preuve évidente de grande passion)」。
世界の文学史上有名な恋愛小説はたくさんありますが、恋に酔いしれる女の子の幸福な気持ちを、これほど生き生きと描写した場面が、他にあるでしょうか。
※      ※      ※
このようにジュリアンとマチルドは、かなり早い段階から、お互いに熱烈に愛し合っています。ところが二人とも、無意味にプライドが高かったり、つい迂闊な言葉を口にしたりして、彼らの恋はなかなか進展していきません。ジュリアンはマチルドを嫉妬させるため、好きでもない他の女性に言い寄って、何通もラヴレターを送ったりもします。
「愛し合っている男女が、愛し合っているにも関わらず、些細なアクシデントや誤解やすれ違いのためになかなか結ばれないで、読者(あるいは視聴者)をやきもきさせる物語」を「ラブコメ」と呼ぶのなら、『赤と黒』のジュリアンとマチルドのやり取りは、まさに「ラブコメ」です。
この作品が書かれたのは、1830年。今ではもう190年も昔のことですが、今読んでもすごく面白い。恋する男と女の心理は、190年を経ても、あまり変わらないのでしょう。
(了)

(註)文中の写真は1997年放映のテレビドラマ(DVDは98年)。マチルドを演じるのは、ジュディット・ゴドレーシュ(Judith Godrèche)。まばゆいばかりの美しさです。

-blog

執筆者:

関連記事

ヒナギクの花びらをむしる

恋占い(effeuiller la marguerite)

こんにちは。バゲットです。 カナダの作家、アリス・マンロー(Alice Munro、2013年ノーベル文学賞受賞)に「恋占い」という短編小説があります。中学生の女の子二人が、地味な中年の独身女性に、遠 …

ジャガイモの花

ジャガイモの花(les fleurs de pomme de terre)

こんにちは。バゲットです。 ジャガイモといえば、肉じゃが、コロッケ、ポテトサラダ、カレーやシチューなど、さまざまな料理で用いられる、日本でも代表的な食材の一つです。日本全国で栽培されていますし、千葉の …

悲しみのイレーヌ

『悲しみのイレーヌ/Travail soigné』フランス語学校

こんにちは。バゲットです。 数年前、ピエール・ルメートル(Pierre Lemaitre)の『その女アレックス(Alex)』が日本のミステリー界を席巻し、60万部を超えるベストセラーとなったことは、ご …

自分を「書く才能に恵まれていない

君は「ガリ勉」?(Tu es fort en thème ?)

こんにちは。バゲットです。 私は学生時代、仏作文のトレーニングとして、フランス語の原文テクストを「再構成」(要するに「暗記」)する練習をしていました。 英語学者で上智大学教授(当時)の渡部昇一さんが『 …

新年明けましておめでとうございます

新年明けましておめでとうございます!

      Chers étudiants, chères étudiantes, Bonne année à tous ! Il y a 10 ans, en janv …

あなたのお住まい、お仕事は東京でしょうか?フランス語や文化に興味がございますか? くつろげて、自分に合うフランス語学校をお探しでしょうか?

東京でフランス語を学ぶのでしたら、新宿、池袋から数分の私たちの学校のサービスをご提案します。

初心者、初級対象者のすべての方には他校にはないプライベートレッスンをご提供します。初心者の方にはマンツーマンでそれぞれの題材の最後までご指導します。

その他のレベルではスタンダードコースとして(中級、上級)クラス内での広がりを作る為に1クラス3人まで のセミプライベートレッスンとプライベートレッスンがございます。

個人レッスンでは各ご要望のコースで対応します(文法、語彙、口語表現、試験準備、テレビニュース他…)。 フランス語会話サロンでは文化や社会に関する様々な題材で意見を交わし、東京からフランスまでを旅し、横断する事が出来ます。又、幼稚園生から大学生まで、セミプライベートレッスン、個人レッスンもご提案させていただきます。

私達の学校は会話を基本とする方法で、フランス語圏出身の講師による生きた会話レッスンを行っています。そういうわけで、私達は本校のことを、会話学校又は自由会話サロンと呼んでいます。