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キャベツの中にいる(être dans les choux)

投稿日:2024年6月13日

こんにちは。バゲットです。

近年私は、年齢のせいか味覚が大きく変わってしまい、以前は「美味しい」と思って食べていた料理の2/3ほどが、「不味く」て食べられなくなりました。発端は一昨年の秋、後期授業が始まってしばらくしたころ。いつものように自分で作ったお弁当を持参したのですが、自然解凍した冷凍食品のフライが酷く不味く感じられたのです。その後、他の冷凍食品や缶詰、ハンバーグやウインナソーセージなど、いろいろと試してみたのですがどれも美味しくなくて、結局お弁当を持参するのは止めてしまいました。

一番困るのは、何が美味くて何が不味いかの区別が、自分でもよく分からないことです。総じて言えば、さっぱりしたものは食べられて、油っこいものがダメなのですが、事情はそれほど単純ではありません。油っこくても暖かければ大丈夫で冷めると食べられないとか、少量なら美味しく感じてもたくさん食べると不味くなるとか、初めて食べたときは美味しかったのに三回目くらいからダメになるとか、美味さと不味さの境界がすごく曖昧なのです。

さて、そんな中で最近、私の「マイ・ブーム」になっているのが、キャベツの(あるいはキャベツ中心の野菜)サラダ。近所のスーパーで一袋100円くらいで売っているのを買ってきて、大皿に盛って大量のドレッシングをかけ、夜、ウイスキーを飲みながら食べるのです。ドレッシングを変えれば味も変わるので、頻繁に食べても飽きません。週に三回は食べているので、最近鏡を見ていると、自分の顔がどことなくバッタに似てきたような気もします(w)。

・・・ということで、今日のテーマは「キャベツ」。

Etre dans les choux…

さて、フランス語に“être dans les choux/キャベツの中にいる”という表現があります。いつものようにネットで検索してみると(https://www.expressio.fr/expressions/etre-dans-les-choux)、“échouer/失敗する”、“être le dernier d’un classement/ある格付けで最下位である”。別のサイトを見ると、“se trouver dans l’embarras/窮地にある”、“subir un échec/失敗する”。つまり、「ある試み・企てに失敗する」とか、「何らかの競争において成績が振るわない」ときに使う言い回しです。

「キャベツ(chou/シュー)」と「失敗する(échouer/エシュエ)」とで音が似ていることから、19世紀後半に生まれた表現だそうです。「くだけた(familier)」言い方でいろいろなケースで使えますが、動詞に“être”を用いていることからも分かるように、ある種の「状態」を指す表現で、ネイティヴに確認してみると、失敗が連続したときや大きな挫折の後「窮地にある」ことを意味するということです。

たとえば、今朝、起きたときに毛布に足を絡ませて倒れて膝を強く打ち、朝食にコーヒーを飲んだらワイシャツの上にこぼしてしまい、いつもの電車に乗り遅れて会社に遅刻して、“Je suis dans les choux ce matin/今朝ボクはキャベツの中にいるよ”。あるいは、本社勤務の私の友人は仕事で重大なミスをして会社に大きな損害を負わせてしまい、次の人事異動では地方の小さな支店に飛ばされるかもしれない、“Il est dans les choux en ce moment/彼は今キャベツの中にいるよ”のように用いることができるでしょう。

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私も10代の終わりから20代の初めにかけて、一年ほど「キャベツの中にいた」時期があります。第一志望の大学の入試に二回続けて失敗し、失意の中で滑り止めの大学に入学し、酷く落胆していたため、さらにいくつかバカな失敗(←フランス語で「C」評価と取るとか、体育の単位を落とすとかw)をしたのです。

その時期のことは今でもよく思い出します。そう言えば、ベルンハルト・シュリンクというドイツの小説家が、こんなことを書いていました。「それとも、小さな敗北だからこそ、克服できないのだろうか?・・・若いころの大きな敗北は、僕たちの人生を新しい方向に向ける。だが、若いころの小さな敗北は僕たちを変えることなく、人生につきまとって心を苦しめる」(『階段を下りる女』)。

私の場合、「人生につきまとって心を苦しめる」というほど深刻ではありませんが、相当に説得力のある一節ではないでしょうか。

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