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七番目の空にいる(être au septième ciel)

投稿日:2024年4月9日

こんにちは。バゲットです。

私は日本人男性としてはごく平均的な背丈ですが、子供のころは同級生たちよりもずっと成長が早く、いつもクラスで一番か二番の身長でした。大抵のスポーツは背が高い方が有利になるので、特に体育が苦手だという意識は持っていませんでした。

しかし大人になって振り返ってみると、私の運動神経の鈍さは明白ですw。だいたい、補助輪なしで自転車に乗れるようになったのが、小学校2年の終わりごろ。クラスの男子では最後だったかもしれません。どんな経緯で乗れるようになったのかはよく覚えていないのですが、自宅から少し出たところの一本道で一人で練習していて何度も倒れたこと(←今考えてみれば、サドルが高すぎたようです)、フラフラしながら10メートルほど走って、「出来たぞ!」と歓喜に包まれたことだけはおぼろげに覚えています。

鉄棒の逆上がりが初めて出来たときも嬉しかった。小学校を卒業して、中学に入る前の春休みでした。どういう訳か一人で中学校にやって来て、グラウンドの隅に四つか五つあった鉄棒のうち一番低いもので試してみたら出来たのです。次に二番目に低いものでやってみたら、やっぱり出来る。それ以降のことは何も覚えていませんが、すごく喜んだことだけは鮮明に記憶しています。

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さて、フランス語に“être au septième ciel/七番目の空にいる”という言い回しがあります。いつものようにネットで検索してみると(https://www.expressio.fr/expressions/etre-ravi-au-septieme-ciel)、“(être)en plein bonheur/幸福の絶頂にある” “(être)extrêmement ravi/極端に喜んでいる” “éprouver un bonheur intense/強烈な幸福感を抱く”などとあります。別のサイトでも “éprouver une très vive satisfaction/大変激しい満足感を抱く” “se trouver parfaitement heureux/完璧に幸福である”。要するに「幸せの絶頂にある」「大喜びしている」という意味です。

être au septième ciel

この表現の起源は古代ギリシアまで遡るそうです。当時の天文学者たちは、彼らが住む平らな世界の上には、半球状の「空」が七つあると考えていました。それぞれの「空」には重要な天体が一つずつあって、たとえば一番下の空には月、二番目の空には火星、三番目の空には金星がある・・・といった具合です。すると七番目の「空」は一番上、つまり神々に一番近いところにあることになる。ここから「幸福の絶頂にある」ことを「七番目の空にいる/être au septième ciel」と言うようになったそうです。

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今になってみると、子供のころは一年に一度か二度は「七番目の空」に行っていたように思います。中二の秋、業者の模擬テストで初めて「成績優秀者」として氏名が公表されたとき、翌年の春、初めて「彼女」が出来たとき、高一の秋、初めて学年でトップになったとき、二年の秋、全国レベルの模擬テストで「成績優秀者」になったとき・・・。興奮して、夜もなかなか寝付けないこともありました。

ところが、年齢を経るにつれて、そうしたことは次第に少なくなり、私はここ十年くらい「幸福の絶頂」など味わったことがありません。雑誌に論文の掲載が決まったりすれば、それなりに「幸せ」な気分にもなりますが、「幸福の絶頂」というほどのことでもない。

ここまで書いてきて思い出したのですが、大学一年生のときの英語のテキストで、アーノルド・トインビー(Arnold Toynbee)がおおむね次のようなことを書いていました。「日本人はよく“I was impressed/私は感動した”と言うが、教養人(主語については確信がありませんが)はそんなに簡単に“感動する”ものではない」と(“Impressions of Japan”という教科書だったと思います)。まあ、確かに考えてみれば、模擬テストで「成績優秀者」になるなんて本当は「どうでもいいこと」です。だいたい私は、大学入試本番では第一志望の受験に失敗したわけですし(←実話w)。頻繁に「七番目の空」に行けたのは単に私が子供だったからで、人生はそんなに甘いものではないということでしょう。

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