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二つの端を合わせる(joindre les deux bouts)
投稿日:2023年10月16日
こんにちは。バゲットです。
以前も書いたことがありますが、私は5年前の春に住宅ローンの返済を終了し、経済的には一挙に、かつ大幅に余裕が出来ました。来年の秋には年金(国民年金と国民年金基金)の保険料の支払いも終わるので、その後は少し仕事の量を減らそうかとも考えています。
このように現状では困窮しているわけではありませんが、私も若いころはお金には大変苦労したものでした。フランス政府関係の安定した仕事を辞めて、31歳で博士課程に入り直したものの、その後大学のフランス語教師の仕事がなかなか見つからなかったからです。それがまず私自身の実力不足に起因することを秘匿するつもりは全くありませんが、原因はそれだけではありません。私はフランス語教育業界に人脈がほとんど無かったのです。私の指導教授は仏文科の所属でありながら、専門は哲学で、他大学の仏文科教師とは全く交流がない。研究室では私が最初の博士課程の学生で、直系の先輩で教職に就いている人が一人もいない。おかげで私は、学習塾で中学生相手に、大学生のアルバイトとあまり変わらない時給で英語を教え、糊口をしのぐしかありませんでした。
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さて、フランス語に“joindre les deux bouts/二つの端を合わせる”という言い回しがあります。ネットで検索してみると、(https://fr.wiktionary.org/wiki/joindre_les_deux_bouts)、“gagner suffisamment d’argent pour assurer une vie décente entre deux versements de salaire/二つの給料日の間にまずまずの生活を確保するのに十分なお金を稼ぐ”。別のサイトを見ると、“parvenir à maintenir pour soi-même un niveau de vie correct/自分自身のためにそこそこの生活レベルを維持することが(やっとのことで)できる”。要するに、どうにかこうにか「人並み」と言える生活を維持している状態を指して言うわけです。ただし、実際の用法では大抵が「彼女は二つの端を合わせることができない/Elle n’arrive pas à joindre les deux bouts」とか、「私は二つの端を合わせるのに苦労している/J’ai du mal à joindre les deux bouts」のように、否定的な文脈で使用します。
この言い回しの起源を調べてみると、ネットでは二つの説が見つかります。まず「農業説」。それによると、この表現は18世紀に出現したそうで、農業において穀物の十分な収穫が得られず、翌年の収穫まで食糧がもたない、端境期を乗り切れないことを「二つの端を合わせられない」と言ったそうです。
もう一つが「モード説」。16世紀に貴族の間でコルレット(collerette)という大きな飾り襟が流行しました。食事のときにそれを汚さないために、大きなナプキンを首に巻くのですが、貧しい貴族は十分に大きなナプキンが買えなくて、首に巻くことができない、つまりナプキンの端を首の後ろで結べない。そこから、経済的に困窮していることを「二つの端を合わせられない」と言うようになった、という説です。私にはどちらが正しいのか判断できませんが、「モード説」の方は複数のサイトに自身満々で詳細な説明があって、何となく「こっちが正解なのかなぁ」という気にさせます。
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上で書いたように、私は若い頃いつもお金がなくてピーピー言っていましたが、今になって考えてみると、それは収入が少なかったためと言うより、お金の使い方がすごく下手だったからだと気づきます。年収は一番少ないときでも250万円前後はありました。親戚の経営するアパートに住んでいたので家賃は相場の半額程度、学費(スライド制だったので大学1年生から変わらず、しかも「奨学金」名目で半額になっていた)も、自分で払えないときには父が出してくれました。他方で、毎日タバコ(当時、一箱270円くらい)を50本以上吸い、そのタバコを吸うために一日に2~3回喫茶店(コーヒー 一杯350円~400円)に入る。食事はほとんどが外食で、渋谷のセンター街で1000円以上するランチをしばしば食べる。今思い出すと、「お前、バカか?」と思います。
そんな私も前世紀の終わりにはタバコをやめ、それに伴って喫茶店にもあまり入らなくなり、さらに2004年に今のマンションを買ってからは、住宅ローンの支払いもあったので、いろいろな面で節約に努めるようになりました。基本的な「生活費」は、おそらく以前の半額程度に減っています。
もっとも、実際には読みもしない(時間上、読「め」もしない)本を衝動買いしているのは、昔も今も変わらない。そういう意味で言うのなら、「バカは一生治らないw」ということなのかもしれませんwww。