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まるまる一つのチーズを作る(en faire tout un fromage)
投稿日:2022年7月14日
こんにちは。バゲットです。
18年前、現在のマンションに引っ越して来てから、毎日夕方、決まった時間に仕事を止めて、お酒(バーボンウイスキー)を飲む習慣ができました。私の住居は11階の窓の大きな角部屋で、「100万ドル」とまでは言わないまでも、夜景がとても綺麗です。一日の仕事を終えて、新宿の高層ビル群、ライトアップされたNTTドコモビルや東京タワー、六本木ヒルズなどを眺めがら、バーボンを飲む・・・。すごくリラックスした気分になって、えも言われぬ「幸福感」に包まれます。
夕食代わり(←夕食は食べない)のツマミには、チーズをよく食べます。普段はスーパーのプライベート・ブランドか「雪印」の安物のチーズですが、何か良いことがあったときは、奮発して少し高価なものを食べることもあります。最近、行きつけのスーパーでチーズの品揃えが変わり、売り場には「la vache qui rit/笑う雌牛」(←どういう訳か、英語で“The laughing cow”となっている)や「Gérard」など、フランス直輸入のチーズも並ぶようになりました。後者は税込みで700円以上して、私にはとても手が出ません。しかし、「笑う雌牛」の方は400円くらいで、私でもたまになら買えそうです。春学期の最後の授業が終わったら久しぶりに食べてみようかな、などと考えている次第ですね。
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と言うことで、「チーズ」です。フランス語に“en faire tout un fromage/そこからまるまる一つのチーズを作る”という表現があります。いつものようにネットで検索してみると(https://fr.wiktionary.org/wiki/faire_tout_un_fromage_de)、“s’agiter et s’irriter pour des choses de petite importance/重要性の小さなことのために、バタバタしてイライラする”。他のサイトも見ると、 “faire toute une affaire de quelque chose qui n’est pas très important/あまり重要でないことを大問題にする”、“grossir à l’extrême une difficulté/困難を極端に誇張して考える”とあります。要するに「些細な事件を大げさに考えすぎる」とか、「状況を誇張して大騒ぎする」ということですね。
例を探してみると、ある社員が会議に二分遅刻しただけで、“Mon chef en a fait tout un fromage/上司はまるまる一つのチーズを作った”。ちょっと遅れただけで「激しく叱責された」ということでしょう(当然のような気もしますがw)。あるいは、些細な不都合やトラブルが生じたとき、“Ça ne sert à rien d’en faire tout un fromage/まるまる一つのチーズを作っても仕方がない”。「大騒ぎする必要は無い」ということです。さらには、例えばフランス語会話の勉強を始める等、ある計画を前に、「私には無理かなぁ~」と尻込みしている友人がいたら、“Il ne faut pas en faire tout un fromage/まるまる一つのチーズを作っちゃだめだよ”のような言い方もできそうです。
20世紀になって生まれた表現で、雌牛から絞っただけの「単純」なミルクから芳醇なチーズという、特にフランスでは好んで食される「複雑な加工品」を作ることに由来するそうです。
付言しておけば、ヴァリエーションとして、“tout”を省いた“en faire un fromage”、中性代名詞“en”を名詞にして“faire (tout) un fromage de+名詞”の形もあります。いろいろな状況で使える言い回しですから、覚えておかれるとよろしいでしょう。
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考えてみれば、私も若いころは些細なことで大騒ぎしたり、小さな挫折で酷く絶望したりしたものでした。一浪した上で第一志望の大学の入試に失敗したときは、半ば本気で「人生、もう終わった」と考えていました(←実話w)。散々振り回されたあげくに失恋したときは、一週間部屋に引きこもって寝込み、体重が5キロも落ちました(←実話ww)。
今となってみれば「バカバカしい」の一語に尽きますが、見方によってはそれが「若さの特権」なのかもしれません。そう考えると、少し「懐かしい」ような気もします。
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