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オレの趣味じゃないよ(Ce n’est pas mon genre !)
投稿日:2020年12月7日
こんにちは。バゲットです。
高度にプライベートな話で恐縮ですが、私が生まれて初めて恋い焦がれたのは、小学校6年生のとき。相手は「元祖アイドル」とも言われる南沙織さんでした。親しい同級生が彼女のファンだったことに触発されたのか、いつの間にか私も彼女の熱狂的なファンになっていたのです。私はいつもいつも彼女のことを思い、彼女を巡ってさまざまな妄想(!)にふけりました。
たとえば、こんな風に。・・・私は学校からの帰りに、家の近くの山道で不審な自動車を目撃する。車中では黒ずくめの男数人が、南沙織によく似た若い女性を押さえつけている。数分後、家に帰ってテレビをつけると、なんと沙織が誘拐されたというではないか!それでは、車に乗っていたのはやはり沙織だったのだ。あの山道の先には、無人の炭焼き小屋がある(←当時は本当にあった)。彼女はそこに監禁されているに違いない。「早撃ち0.3秒のプロフェッショナル(=次元大介のキャッチフレーズ)」な小学生(w)である私は、愛用のマグナム(←なぜか持っているww)を握りしめ、単身、沙織の救出に向かうのだった・・・www(この「早撃ち0.3秒」は、その時の気分で「剣の達人」になったり「柔道の達人」になったりします)。ふむ、小学生の男の子の妄想としては、いかにもありそうな話です。
しかし、南沙織に対する私の気持ちは一年もしないうちに冷めてしまいました。当時人気だった新人歌手発掘番組「スター誕生!」で「合格」し、デビューが決定していた桜田淳子に一目惚れ(le coup de foudre)したからです。
白いカスケット(casquette)にショートカットの淳子は、私にとってまさに「天使」でした。紛れもなく理想のタイプです。沙織と違って、年齢も私と一つしか違いませんから、本当に「恋人」になれる可能性だってゼロじゃないw。オレは女の子には割とモテるしww(←子供の戯言だと思ってくださいw)。こうして私は日夜、淳子とのアヴァンチュールを妄想(!!)するようになりました。もう中学生になっていましたから、妄想の内容はもっぱら「ファーストキス」w。
たとえば、こんな風に。・・・私は淳子と海辺(あるいは湖畔だったり草原だったり森の中だったりするw)を散歩している。私たちは手をつないでいる。彼女が何かに躓き、倒れそうになって、私は空いている方の手で彼女の肩を抱きとめる。ハッとする淳子。はからずも抱き合うような姿勢になった私たち。間近で見つめ合う瞳と瞳w。彼女は覚悟を決めたかのように、ゆっくりと目を閉じるww。私はためらいがちに唇を・・・www。ふむふむ、超絶的に陳腐ですが、中学一年生の男子の妄想なんて、そんなものでしょう。
と、そのように私は熱烈に淳子を愛したのでしたが、その気持ちも一年も続きませんでした。中学も二年生になると、身近な女の子に関心を持ち始めるからです。
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さて、フランス語に“Ce n’est pas mon genre/それはオレの趣味じゃない”という言い回しがあります。手元の辞書で例文を探してみると、“Elle est très jolie, mais ce n’est pas mon genre/彼女はとてもかわいいけど、ボクの好みのタイプじゃない”。主語は“ce”でなくてもよいようで、たとえば「ウィクショネール(https://fr.wiktionary.org/wiki/genre)」は、次の例を挙げています。“Dire que j’ai gâché ma vie pour une femme qui n’était pas mon genre/私は自分の趣味でもない女のために人生を台無しにしてしまったのか(上記サイトの項目10番/『失われた時を求めて』のスワンの言葉)”。多くの辞書には否定形で載っていますが、肯定文で“C’est totalement mon genre/完全にオレのタイプだよ”もOKです。
恋愛の対象として「好みじゃない」の他に、この表現は「やり方/行動(あるいは妄想w)」が「(ある人の)趣味/流儀じゃない」という意味でも用います。たとえば“Ce n’est pas son genre de faire une chose pareille/彼はそんなことをする人じゃない”。あるいは肯定で“C’est bien son genre/それはまったく彼女らしい”。
いろいろな場面で使える表現なので、覚えておかれるとよろしいかと思います。
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「You Tube」等で古い映像を見ると、私の女性の「好み」が思春期のころと全く変わっていないことに驚きます。実際、在りし日の南沙織や桜田淳子は、今の私にとっても「完璧に好み/C’est tout à fait mon genre !」。他方、相も変わらずバカな空想に明け暮れている(←実話w)私ですが、それでもいい歳をして、上に書いたような幼い妄想にふけっているわけではありません。「それはもうオレの流儀じゃないね/Ce n’est plus mon genre !」。