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靴下の中のモラル(la morale/le moral dans les chaussettes)
投稿日:2019年11月25日
こんにちは。謎のキャラクター、バゲットです。
いきなり高度にプライベートな話で申し訳ありませんが、私の生涯で今年の夏ほど、自分の足の臭さ(!)を強烈に感じたことはありませんでした。
私は今年の夏休み、ほとんど家にこもって論文を書いていました。キーボードに向かって、順調に進んでいるときはよいのです。ところが疲れてきたり行き詰ったりして、一休みしようと、パソコンに背を向けてスリッパを脱ぐと、裸足の足のつま先あたりから、強烈な臭いがむわ〜と放たれて、私の鼻をつく。あまりに臭いので、一日に三回、足を洗い、スリッパも洗ったり交換したりするのですが、それでもしばらくすると、私の足は再び猛烈な悪臭を放ち始めるのです。
そんなある日のこと、ネットで、「特急電車の中で靴を脱いで、臭い足を投げ出す人がいて迷惑だ」という趣旨の記事を読みました。私も著者の意見に大いに賛同し、「真夏に公共の場所で靴を脱いで、超絶臭い足を他人の前にさらすなんて、人間として最低限のモラル(la morale)も持っていないwと思われても、仕方ないよなぁ・・・」と考えた次第なのでした。
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さて、以前も書いたことがありますが、フランス語で「ラ・モラル(la morale)」と言えば「道徳」「倫理」。しかし、同じ語でも男性形で「ル・モラル(le moral)」と言うと、「気力」「士気」を意味します。
動詞“avoir”とともに用いて、“Elle a le moral”は、「彼女は気力が充実している、やる気満々だ」。“Elle a bon moral(よい気力)”や“Elle a le moral élevé(高い士気)”でも同様です。
反対に“Il n’a pas le moral”、“Il a mauvais moral(悪い士気)”、あるいは“Il a le moral bas/à zéro/à plat(低い/ゼロの/ぺしゃんこの士気)”と言えば、「彼は気力を失っている、落胆している」という意味。ネイティブに確認しましたが、「強い精神的ショックを受ける」ことは必須ではなく、たとえば会社でつまらない仕事ばかりやらされて、「こんな仕事、やる気にならない」といった場合でも使えるそうです。あるいはネットで調べてみると、「一人も友達がいなくて、朝から雨が降っていて、気分がふさぐ」みたいなケースもOK。
面白いと思ったのは、“avoir le moral dans les chaussettes(靴下の中にモラルを持つ)”という言い方。“la morale(倫理)”じゃなくて“le moral(気力)”ですから、足の臭さwは関係ありません。気力の度合いを身体の中の垂直線に対応させると、一番下に来るのが「足」。ですから、“J’ai le moral dans les chaussettes(私は靴下の中に気力を持っている)”は、「私は全くやる気がない/意気消沈している」という意味ですね。
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考えてみれば、私も若いころは、大した理由もなくひどく落ち込むことがありました。学部の学生だったとき、一年に一度か二度なのですが、朝、目が覚めて、特にこれといった原因もないのに何もする気にならず、何もかも面倒になって、人生そのものも面倒になって、ほとんど鬱病みたいになって、夕方まで布団の中でウダウダしていて、夜になってお腹がすいて、何か食べようと思ってようやく起き出す・・・というようなことがありました。
ところが20代半ばになると、そうしたことはバッタリとなくなりました。バカな話ですが、今になってみると、何となく懐かしいような気もします。
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