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プルースト流女の子の口説き方(la manière proustienne de séduire une fille)

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こんにちは。バゲットです。

マルセル・プルーストの小説『失われた時を求めて』。長大かつ難解のことで知られ、現代文学にも多大な影響を与えたとされる、20世紀フランス文学の名作です。社交界の人間模様が延々と語られたり、記憶や時間、芸術についての哲学的思索が挿入されたりと、読むには相当な集中力と忍耐力が必要ですが、ときどきコミカルなエピソードも出てきます。話者(=主人公)が、恋人のアルベルチーヌ(Albertine)と初めてキスをする場面もその一つ。
第二篇『花咲く乙女たちのかげに』で、バルベック(架空の町)の海岸で出会った「花咲く乙女たち」の一人、アルベルチーヌに、散々振り回された(からかわれた?)あげく、こっぴどくフラれた話者でしたが、第三篇『ゲルマントのほう』になると、アルベルチーヌの方から話者のパリのアパルトマンを訪ねます。
ゲルマントのほう
折しも両親は外出中で、家には話者と女中のフランソワーズがいるばかり。絶好の機会を逃すまいと、彼は自室にやって来たアルベルチーヌを口説きにかかります。以下、セリフを中心に紹介しましょう。鈴木道彦先生の訳文を借用します。

N(話者)「ねえ、ぼくはちっともくすぐったがり屋じゃないんだよ。きっと一時間のあいだくすぐられたって、何も感じないくらいだね (Imaginez-vous que je ne suis pas chatouilleux du tout, vous pourriez me chatouiller pendant une heure que je ne le sentirais même pas.)」
A(アルベルチーヌ)「ほんと? (Vraiment !)」
N「ほんとうさ (Je vous assure.)」
A「わたしがやってみましょうか? (Voulez-vous que j’essaye ?)」
N「よかったらやってごらん。でもね、ベッドの上にすっかり横になった方が、やりやすいと思うよ(Si vous voulez, mais alors ce serait plus commode que vous vous étendiez tout à fait sur mon lit.)」
A「こんなふうに? (Comme cela ?)」
N「ううん、もっと深く入りなさいよ (Non, enfoncez-vous.)」
A「でも、わたし重すぎなくって? (Mais je ne suis pas trop lourde ?)」

と、ここまで来たとき、突然、女中のフランソワーズ(おばあさんです)がランプを持って、入ってきます(笑)。ドアの外で聞き耳を立てていたのでしょう。
二人は、何やかや言ってフランソワーズを追い出し、恋のゲームを続けます。

N「ねえ、ぼくの心配が分かる?それはね、もしこんなふうにしていると、つい我慢できなくなって接吻してしまうんじゃないかっていうことなのさ (Savez-vous ce dont j’ai peur, c’est que si nous continuons comme cela, je ne puisse pas m’empêcher de vous embrasser.)」
A「そうなったら困るけど素敵だわ(Ce serait un beau malheur.)」

ここで勝利(?)を確信した主人公は、少し話をそらしたりするのですが、ついにアルベルチ-ヌの頬に口づけをします。そのとき彼は、目の前にいる現実の、生身の女性に唇を寄せるというよりも、彼女を通して、バルベックの思い出の全体に口づけしようとするのですが・・・と、まぁ、難しい話はやめておきましょう。

上の対話を読んですぐに気づくのは、話者とアルベルチーヌが、お互いを“tu”(親しい間の呼び方)ではなく、“vous”(丁寧な呼び方)と呼んでいること。それが当時の上流社会の習慣だったのでしょうか。
また、なぜ「頬」にキスするのでしょう。現代の日本だったら、高校生(中学生?)のカップルでも、「唇」にキスすると思うのですが・・・。当時のフランスの風俗・習慣や、話者とアルベルチーヌの年齢(よく分らないのですが、17歳~19歳ぐらい?)では、「唇にキス」はNGだったのでしょうか。
私の友人にはプルーストの研究者もいますから、今度会ったら聞いてみます。

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