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月末を丸くする(arrondir ses fins de mois)

投稿日:2021年5月10日

こんにちは。バゲットです。

前世紀の終わりごろに文部科学省が方針を変え、大学での第二外国語が必修ではなくなって、フランス語(+ドイツ語)非常勤講師の状況が激変したことは、昨年の記事でも書きました。少子化の影響も相まって、私自身も複数の大学・短大で雇い止めにされたり授業数が大幅に減少したりして、経済的な苦境に陥ったことが二度あります。
一度目(2006年)は「かくなる上は、何か金になる副業を始めるしかない」と一念発起し、行政書士の資格を取り、英会話の勉強も始めたところ、翌年、友人の紹介で別の大学に採用されて、結局は事なきを得ました。
二度目(13年)は、「来年は授業が増えるかもしれないし、一年間は様子を見よう」と考えて、生活費を稼ぐために安い給料でアルバイトをしました。時給1050円(!)で区役所の書類整理の仕事をしたり、1150円(!!)で試験監督の仕事をしたり、といった具合です。このときも幸い、翌年には授業数が回復し困難を脱することができました。
とはいえ、二度も苦境に陥ると、将来に関してはどうしても慎重になります。またいつか担当授業数が激減するのではないかと心配になるのです。結局、比較的給料の良かった季節労働は続けることにし、税務署での書類整理(←春だけ)と、区立中学での英語の補習教師(←秋だけ)の仕事は、三年前、住宅ローンの返済が終了するまで続けました。年間で30万円程度の副収入を得ることができ、少なくとも書籍代に関しては節約を考える必要がなくなりました。

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さて、もうかなり前のことですが“mettre du beurre dans les épinards/ホウレンソウにバターを入れる”という表現を紹介しました。「苦しかった生活が少し楽になる(←バターを入れて少しだけ食事を贅沢にできる)」という意味です。似たような内容の表現で、今回紹介したいのが、“arrondir ses fins de mois/月末を丸くする”。
いつものようにネットで検索してみると(Définition de : arrondir ses fins de mois / Bob | ABC de la langue française (languefrancaise.net))、“gagner un peu d’argent supplémentaire, en plus de son salaire habituel, par des moyens licites ou non/合法的だったりそうではなかったりする手段を用いて、 普段のサラリーに加えて、少しばかり補足的なお金を得ること”とあります。別のサイトでは、“recevoir un peu d’argent en complément de ses revenus habituels pour éviter d’être démuni en fin de mois/月末に困窮することを避けるために、普段の収入に補足して、少しのお金を受け取ること”。

Comment arrondir ses fins de mois ?

何人かのフランス人ネイティヴにも確認しましたが、やはりニュアンスとしては「補足的な労働」で、「少額の収入」を得て、「苦しかった生活が少しだけ楽になる」。上に書いた私のケースは当てはまりそうです。また、この「補足的労働」はいかがわしいものであってもよく、ネットで見つかる例文には「売春する」や「客をだます」などもありました(註)。
しかしあくまでも「労働によって」ですから、「親が亡くなって遺産が入った」とか「住宅ローンが終わった」とか「子供が就職して金がかからなくなった」などという場合は、「月末を丸くする」とは言いません。そうしたケースでは、以前紹介した“mettre du beurre dans les épinards/ホウレンソウにバターを入れる”を使う方がよいでしょう。

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ネットで検索すると、“Comment arrondir ses fins de mois ?/いかにして月末を丸くするか”とか、“○ astuces pour arrondir ses fins de mois/月末を丸くするための○個の妙案”といったサイトが多数ヒットします。実際に書かれている内容は「ネットでアンケートに答える」、「不要なものをネットで売る」等、誰でも思いつきそうな平凡なことばかり。そんなサイトが多数存在するということは、逆に言えば、それだけ「月末を丸くしたい人」がたくさんいるということなのでしょう。
確かに、考えてみれば、一口に「生活が苦しい」と言ってもその内実はさまざまです。文字通り赤貧にあえいでいる方もいれば、人並み以上の収入がありながら何らかの理由(たとえば高級マンションを買って住宅ローンの返済が苦しい、子供が私立の医学部に通っていて学費の支払いが大変、あるいは単に、どういうわけか無駄遣いがやめられない・・・等々)で、経済的に「楽」でない方も多いでしょう。そういう意味では、“arrondir ses fins de mois/月末を丸くする”という表現は、思いのほか使い道の多い表現なのかもしれません。

註・この表現について「ロベール仏和大辞典」は、「(アルバイトなどで)収入を補う」に加えて、話し言葉として「売春で小遣い銭を稼ぐ」という語義も挙げています。

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