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お風呂の中に入る(se mettre dans le bain)

投稿日:2021年8月2日

こんにちは。バゲットです。

私は千葉の山奥の農家に生まれましたが、子供のころ住んでいた家はかやぶき屋根のひどく古い家でした。玄関を入ると農作業用の広い土間があって、その奥に大きな食卓と台所、そこを右に行ったところにお風呂がありました。薪を燃やして沸かす五右衛門風呂です。
子供のころの私は、お風呂が嫌いでした。多少の距離があって壁の陰になっているとは言え、台所の隣で間に仕切りもない。そこに8人の大家族が次から次へと入るのです。お風呂に入ってものんびりした気分には全くならず、「気持ちいい」と思ったこともほとんど無く、したがって夜になっても「お風呂に入りたい」とも思わず、私にとってお風呂は親に言われて入るだけのものでした。いつも風呂桶にちょっと体を沈めただけですぐに出てしまって、母親からは「烏の行水」などと言われていました。

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皆さまもご存じのように、フランス人はあまりお風呂には入りません。独身者向けのワンルームマンションには、通常お風呂(baignoire/浴槽)はなくて、シャワーだけ。一戸建ての家や家族用のアパルトマンは多く浴槽を備えていますが、実際に使うことはあまりなく(頻度は人によって大きく異なるようで、一般に男性より女性の方がよく使うそうです・註)、普段はシャワーで済ませます。
私が住んでいたボルドーの下宿も、カーンの学生寮も、共用のシャワーしか備えていませんでした。それでも私は、そのことについて特に不便には感じませんでした。そもそも空気が乾燥していて、日本のように身体がベタベタした感じにならないので、夕方になっても「お風呂に入りたい」という気分にならないのです。

お風呂の中に入る/se mettre dans le bain

さて、フランス語で「お風呂に入る」は“prendre un bain”。“prendre mon bain”のように、所有代名詞を使うこともできます。代名動詞で“se baigner”という表現もありますが、こちらは普通「(海/川/プールで)水浴びをする、水遊びをする」という意味ですので、気をつけてください。「シャワーを浴びる」が、“prendre une douche”とも“se doucher”とも言えることを考えると、奇妙と言えば奇妙かもしれません。
文字通り「お風呂の中に入る/se mettre dans le bain」という言い回しもあります。ネットで検索してみると(https://lemondedufrancais.com/2011/12/05/lexpression-du-jour-se-remettre-dans-le-bain/#:~:text=Se%20mettre%20dans%20le%20bain,%27interruption%20ou%20d%27inactivit%C3%A9.)、意味するところは“s’acclimater à un nouvel environnement/新しい環境に慣れる”。別のサイトでは“s’adapter à quelque chose de nouveau, réussir à prendre l’habitude de faire quelque chose/何か新しいことに順応する、何かをする習慣をつけることに成功する”。
たとえば、新たに移動(もしくは転職)してきた同僚が職場に打ち解けた、新しい仕事に慣れたと言いたいなら、“Mon nouveau collègue s’est mis dans le bain/新しい同僚はお風呂の中に入ったよ”。あるいは事務所に新しいソフトウエアが導入されて、早急に使い方を身につけなければならないたときは、“Je dois vite me mettre dans le bain/ボクは急いでお風呂の中に入らなければならない”と言えばよい。
いろいろなケースで使えそうなので、覚えておかれるとよろしいかと思います。

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私が中学三年生のとき、隣にあったクリ畑を潰して新しい家を建てたのですが、お風呂だけは古い家の五右衛門風呂を使い続けました。風呂好きだった曾祖父が自分で沸かして、自分で入り、他の家族もそれに続いていたのです。家の周囲に枯れ木はいくらでもありましたから、枯れ木を使ってお風呂を沸かせば灯油(←新居のお風呂は灯油で沸かす方式でした)も節約できて、合理的だったのでしょう。
こうしてほぼ7年間、私の家族たちは新居に住みながら、夜になると庭を歩いてお風呂に入りに行きました。古い家はもう取り壊してあり、屋根があって周囲をトタンで囲っただけのお風呂です。私の家は集落から離れた奥まったところにあって、山に囲まれ、隣の家からも100メートルほど離れていましたから、他人の目を気にする必要もありません。家族は母屋にいて、たった一人でお風呂に入るので、リラックスした気分にもなります。晴れた日には、トタンと天井の隙間から星々を見ることができて、風呂桶の中ではときどきアマガエルが泳いでいます。私はいつの間にかお風呂が好きになっていました。
・・・自然に囲まれて、ひとりお風呂に入る。今になってみると、すごく贅沢な経験だったように思います。

註・そう言えば、お風呂に入る習慣をフランスに持ち込んだのは、マリー・アントワネット(Marie-Antoinette)だと言われています。

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