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お皿の中に足を入れる(mettre les pieds dans le plat)
投稿日:2026年9月5日
こんにちは。謎のキャラクター、バゲットです。
私が大学院修士課程の学生だったとき、博士課程に在籍していた先輩で、周囲の人たちから蛇蝎のごとく嫌われている男性、Mさんがいました。その方は、普通の人だったら他人の感情に配慮して絶対に言わないようなことを、平気で口にするのです。
研究室が違ったこともあって、私自身はその方と特に深くお付き合いした訳ではありませんし、特に腹が立つようなことを言われた記憶もありません。しかし彼と同じ研究室に属する学生や、別の研究室でも学年が近い人に聞いてみると、皆が心にグサリと突き刺さるようなことを言われた経験があるのです。
例えば、私と同期に、母校のライバルとされる「K大」出身の女子学生がいました。「K大の大学院入試は失敗したのかな?」と思いましたが、もちろん私はそんな失礼なことは尋ねません。ところがMさんは、面と向かってそれを平気で言ったのです。彼女は「K大の院は受けていません」と答えましたが、明らかに傷ついたように見えました。
あるいは、学部の一年生からの私の友人で、就職に失敗して意図的に留年した男と学生ラウンジで話していたときのこと。Mさんがやってきて私の隣に座り、彼と話し出しました。そして、彼が就職試験に合格できずに留年したことを知ると、「そうなの~」と、(正確な文言は覚えていませんが)あからさまに同情してみせる。その同情の仕方があまりに大げさなので、かえってバカにしているように見えるのです。そればかりかMさんは、「ボクは卒業後、朝○新聞に就職したんだけど、一年で辞めて大学院に入り直したんだ」などと、自慢話を始めたのです。しばらくするとMさんが行ってしまったので、「あの人は皆から嫌われているんだよ」と友人に言いましたが、彼も明らかに不愉快そうに見えました。

さて、フランス語に“mettre les pieds dans le plat/お皿の中に足を入れる”という表現があります。いつものようにネットで検索してみると、“parler sans ménagement, dire une chose brutalement, soit par mégarde et manque de tact, soit parfois avec intention/不注意と機転の不足によってであれ、ときには意図的にであれ、手加減なしに話す、乱暴にものを言う”。“aborder une question délicate avec une franchise brutale/乱暴な率直さでデリケートな事柄に触れる”、“aborder maladroitement un sujet à éviter sans s’en rendre compte/気づかずに、避けるべき話題に不用意に触れる”。要するに、「言ってはならないことを言ってしまう」、「常識のある人なら避けるようなデリケートな話題に無遠慮に言及する」ということ。辞書には「失言する」という訳語が載っていました。
19世紀の初めにできた表現で、上では「お皿の中に」と訳しましたが、ここで“le plat”は「お皿」ではなく、川などの「浅瀬」のことのようです。浅瀬に足を突っ込んで、澄んでいた水が濁ってしまう。それを「混乱を招く」、「その場の空気を悪くする」ことの比喩として捉え、「失言する」という意味になったということです。
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さて、上記のMさんが「失言していた」(と言うより「暴言を吐いていた」)のは、大学院の内部だけではなかったようです。と言うのも、彼は指導教授に紹介されて非常勤講師をしていた勤務先を、ことごとく解任されているからです。最後にはその指導教授も腹を立ててしまい(註・本来ならば彼が退任した後は彼の後輩に回るはずだったポストを、失ったわけです)、「もうキミには仕事は紹介しないから」と言われたそうです。
その後、どう言うツテがあったのか、彼は日本の某私立高校のフランス分校の教師に就任。
専任教員(=正社員)だという話でしたから「定年まで働くのか」と思っていたら、7~8年で(解任されたのか自分から辞めたのか知りませんが)帰国してしまい、直後に一度だけ電話で話した後、完全に行方不明になってしまいました。
「お皿の中に足を入れる」のも、あまりに頻繁かつ極端になると、人生を踏み外すwようですね。