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指を鼻の中に入れて(les doigts dans le nez)
投稿日:2021年11月18日
こんにちは。バゲットです。
以前もちょっと書いたかもしれませんが、私の高校時代の友人で、六年ほど遅れて四国の国立大学の医学部に入学し、現在は千葉で脳外科医をしている男がいます。彼は高二のときにキリスト教に入信し、「キリスト教の神父になりたい」と同志社大学の神学部を第一志望に受験するも、あえなく失敗。その後、どういうわけか志望を大きく変えて、三年後に日大の工学部建築学科に進学します。そして教会で知り合った医者の娘さんと、何と学生結婚!しばらくすると、今度は自分も医者になりたくなったようで、お義父さまにお金を出してもらい、医学部を目指して受験勉強を再開します。そして苦難の末、めでたく合格したのです。
彼は現役時は「私立文系」で、理系の科目は全く出来ませんでした。「アタマが切れる」という印象はなく、学年順位は恐らく「中の下」ぐらい。それで国立の医学部によく合格したものだと、クラスの友人一同、皆、あっけにとられたものです(註・私たちの高校は三年生になっても文系/理系の区別がなく、「私立文系」が第一志望でも数Ⅲや物理Ⅱが必修でした)。
まあ、それはそれでいいのですが、実はこの男、運動神経が抜群だったのです。クラブは「マンドリン部」に属して上品に音楽などをやっていたのですが、体育の授業で「床運動」や「鉄棒」をすると、どう見ても「体操部」所属にしか見えないほど、クルクルと飛び跳ね、飛び回る。前回も書いたように私自身は運動音痴だったので、「なぜコイツにはこんなことが、こんな簡単そうにできるのだろう」と、私はいつも羨望の念をもって見ていました。その彼が「脳外科医!」になったのです。ひょっとしたら、手術は「アクロバット的!!」に上手なのかもしれません。
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さて、フランス語に“les doigts dans le nez/指を鼻の中に入れて”という表現があります。いつものようにネットで調べてみると(https://fr.wiktionary.org/wiki/les_doigts_dans_le_nez)、それが意味するところは“très facilement/とても簡単に”、“sans aucune difficulté/何の困難もなしに”。同じサイトの例文を見ると「il résout les intégrales les doigts dans le nez/彼は“指を鼻の中に入れて”積分を解いてしまう」とか、「Qualifié les doigts dans le nez pour les huitièmes de finale du championnat du monde/“指を鼻の中に入れて” 世界選手権ベスト16に進出する」が挙げられています。
別のサイトによれば、1912年に競馬界で生まれた表現だそうで、実話か否か確認できないのですが、「le jockey est arrivé premier les doigts dans le nez/そのジョッキーは“指を鼻の中に入れて”一位でゴールした」という文が紹介されていました。
その段で言えば、上記の友人は“指を鼻の中に入れて”バク転をしたり、大車輪をしたりしていたのです。
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少し前のことですが、東大法学部を首席で卒業したというテレビのコメンテーターが、岸田総理がかつて東大受験に三回失敗していることを皮肉って、「よっぽど受験が好きなんだな」とか「ちょっと勉強すれば受かっちゃう」などと放言したことがありました。自分は「指を鼻の中に入れてw」東大文一に現役で合格した(=岸田さんよりずっと頭がいい)と言っているわけですが、さすがにこの発言に対して世間の反発は凄まじく、ネットでは炎上。「その得意のお勉強で、総理大臣になってみればいい」などと、意地の悪いコメントもありました。
しかし、上記の友人の例からしても、私は大学入試における成績と「地頭=本当の知的能力」に、決定的な相関関係があるとは考えていません。もちろん、「素質」が関与していることは否定できませんが、テストでの得点力には「努力の総量と要領の良さ」も大いに関係するからです。
私は博士課程の学生だったとき、ある予備校で英文解釈の教師をしていました。自分自身が予備校で教えてみると本当によくわかるのですが、受験勉強には明らかに「コツ(truc)」があります。まず、科目ごとに効率的に得点を伸ばす勉強方法がありますし、さらに科目の特性に合せて、比較的安定して高い総合点を取る方法もあります。具体的に言えば、文系なら英語と社会(←「努力」と「要領」がものを言い、得点に差がつきやすく、出来・不出来があまりない)で「勝負」です。それが分かっていないと、第一志望の大学に合格するのは難しいと思います。
この記事を読んでくださっている方の中には、第一志望に合格できず、滑り止めの大学で勉強している方もいらっしゃることでしょう。でも、失敗したからといって、自信を失う必要はありません。本当の「勝負」はこれからだと思って、頑張ってください。