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トカゲはいない(Il n’y a pas de lézard)

投稿日:2023年3月13日

こんにちは。バゲットです。

私が小学校に入学したのは、ちょうど「第一次怪獣ブーム」が始まるころでした。「ウルトラQ」や「ウルトラマン」のテレビ放送が発端となって、巨大怪獣が登場する(そして多くの場合、巨大ヒーローがそれを退治する)番組を各テレビ局がこぞって制作し始めたのです。映画界でも「ゴジラ・シリーズ」や「ガメラ・シリーズ」など、多くの怪獣映画が公開されてヒットしました。私がよく読んでいた漫画雑誌『少年マガジン』や『少年サンデー』でも、しばしば巻頭で怪獣映画が特集されて、私の夢を掻き立てました。

しかし、当時の私にとって現実的に接近可能な唯一の「都会」だった木更津には、映画館が二つしかありませんでした。一方は日活のポルノ映画を専門に上演していましたから、事実上「普通」の映画館は一つしかなく、そこで怪獣映画が上演されることは決してありません。ゴジラもガメラも、モスラもラドンもギャオスも、私にとっては、存在する(架空の世界ですが)ことは知っていても、たまにテレビで放映されて見る以外、決して見ることのできない「夢の怪獣」だったのです。

そんなこともあって、1990年代初頭、すでに一般に普及していた家庭用ビデオデッキを遅ればせながら購入すると、私は古い怪獣映画に熱中しました。映画自体も(いい歳をしてw)十分堪能しましたが、何より驚いたのは、当時60歳前後になっていた「おばあちゃん女優」たちが20代で出演していたこと。「あのおばあちゃん、こんな美人だったのか!」

と、目を見張ったものでした。

・・・さて、「怪獣」といえば、その多くは巨大爬虫類。で、今日のテーマは「トカゲ/lézard」です。

  • ※     ※      ※

フランス語に“Il n’y a pas de lézard/トカゲはいない”という表現があります。いつものように、ネットで検索してみると(https://www.linternaute.fr/expression/langue-francaise/20671/pas-de-lezard/)、“Il n’y a aucun problème/何の問題もない”、“Ce n’est pas grave/それは重大ではない”、“Il n’y a aucun souci/何の心配もない”。些細なトラブルがあったとき、あるいは親しい人が心配して「大丈夫かい?」と聞いてきたとき、「いや、何の問題もない」「たいした事はない」「全ては順調だ」のような意味で使うのでしょう。くだけた言い方では“’Y’a pas de lézard”、あるいは単に“Pas de lézard”とも言うようです。

Il n’y a pas de lézard

もともとは1970年代に音楽業界で生まれた表現で、音楽の録音中に入る“un sifflement parasite/雑音の口笛”を“lézard/トカゲ”と呼んだことに由来するとか。ここで「雑音の口笛」とは、マイクをスピーカーに近づけ過ぎたときなどに出る「キーン」とか「ブォォォォォン」という音を指すようです。しばらくは業界内でしか言わなかったそうですが、1984年の映画の中で繰り返し使われて、その後一般に普及したそうです。

  • ※     ※      ※

さて、上で書いたように、私は子供のころ怪獣映画に憧れていましたが、それは大人になってからも変わりませんでした。「平成ゴジラ・シリーズ」も「平成ガメラ三部作」も、すべてロードショーで観ましたし、20年ほど前には、小さな雑誌ですが、ゴジラについての哲学的エッセイを掲載したこともあります(「決定不可能性としてのモンスター/怪獣映画の脱構築のために」)。「初老」と言われる年齢になった現在でも相変わらずで、「Netflix」や「Amazonプライム」でも、しばしば怪獣映画を観て楽しんでいます。おそらく80歳になっても90歳になっても(生きていればw)観ているのでしょう。まぁ、若い人から見たら、「怪獣映画に熱中する90歳の老人」は相当に滑稽なものかもしれませんが(w)。

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