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「投稿者アーカイブ:L'école de Français」一覧

「諸聖人の日」って何?(Qu’est-ce que la Toussaint ?)

2018/10/31  -ブログ

こんにちは。バゲットです。 一ヶ月ほど前に書きましたが、フランスでは国民の祝日は年間11日あって、うち6日がキリスト教に関連したものです。再度記しておけば、それらは「復活祭の月曜日(移動祝日、2018年は4月2日)」、「キリスト昇天祭(移動祝日、同じく5月10日)」、「聖霊降臨祭の月曜日(移動祝日、同じく5月21日)」、「聖母被昇天祭(8月15日)」、「諸聖人の日(11月1日)」、そして「クリスマス(12月25日)」。「復活祭」と「クリスマス」は非キリスト教徒の間でも有名ですし、その他の祝日も日本語の訳語から何となくその趣旨はわかります。しかし「諸聖人の日」だけは、おそらく多くの方が、「一体何の日なのだろう」と首をひねるのではないでしょうか。タイミング(11月1日です!)も良いので、少し調べてみました・・・。「諸聖人の日(Toussaint)」は、ローマカトリック教会が、「有名無名を問わず、すべての聖人(=tous les saints, connus et inconnus)」を祝福する日です。ウィキペディア・フランス語(+日本語・英語)ヴァージョンによれば、紀元後4世紀にはすでに「すべての殉教者(tous les martyrs)をたたえる(honorer)」祭日が存在していました。初期キリスト教はローマ帝国で苛烈な弾圧を受け、膨大な数の殉教者が生じたため、彼らを祝福する日を制定したのです。それは当初、「聖霊降臨祭の後の日曜日(le dimanche après la Pentecôte=2018年は5月27日)」でした。その後、7世紀初頭に一旦、5月13日に移りますが、8世紀の前半、教皇グレゴリウス3世(在位731-741)がローマのサン・ピエトロ大聖堂(Basilique Saint-Pierre)に、使徒とすべての聖人・殉教者のためにチャペルを建造し、これを機に「殉教者をたたえる日」は5月13日から11月1日に移ります。この11月ヴァージョンは、シャルルマーニュ(Charlemagne、在位800-814)の時代にはすでに広く受け入れられていたようです。そして835年頃、教皇グレゴリウス4世(在位827-844)が教皇勅書を出し、「すべてのキリスト教徒(toute la chrétienté)」が「諸聖人の日」を祝うことを命じたのでした。では、この日、フランス人たちは何をするのでしょう。ご先祖さまのお墓参りをするのです(↓)。 たいていのフランス人の先祖に「聖人」や「殉教者」がいるというわけではありません。翌11月2日が「死者の日(commémoration des fidèles défunts)」として、死者の魂のために祈りを捧げる日に定められているからです。つまり、11月1日は「諸聖人の日」で国民の祝日ですが、2日は休日ではないため、1日にお墓参りをすることが習慣になったのです。※      ※      ※さて上記のように、「諸聖人の日」は、有名無名を問わず、またローマ教皇庁によって「列聖(canonisation)=『聖人』と認定」されているか否かを問わず、すべての聖人と殉教者をたたえる日です。と言うことは、日本で豊臣秀吉や徳川幕府によって処刑された「キリシタン」の人たちも、祝福される「諸聖人」に含まれるのです。そう考えれば、私たちも「諸聖人の日」を、少し身近に感じることもできるのではないでしょうか。

マリアンヌを知ってるかい?(Tu connais Marianne ?)

2018/10/23  -ブログ

こんにちは。バゲットです。 フランス共和国の象徴と言えば、まずは青白赤の三色旗(le drapeau tricolore)、次いで国歌ラ・マルセイエーズ(la Marseillaise)を思い浮かべる方が多いでしょう。でも、共和国の象徴は他にもあります。たとえば、フランス大使館でロゴマークに使われている、この女性(↓)です。 彼女はマリアンヌ(Marianne)という名前です。ウィキペディア・フランス語ヴァージョンには、「マリアンヌはフランス共和国を象徴する人物像(figure symbolique)であって」、「それはフランス共和国と《自由、平等、友愛》の標語に含まれる価値観を具象化したものである(elle incarne la République française et ses valeurs contenues dans la devise : Liberté, Égalité, Fraternité)」とあります。象徴としてのマリアンヌの起源については諸説あるようですが、有力な説によれば、それはフランス革命時の1792年秋、国民公会で王政の廃止と共和国の樹立が宣言されたころ、南フランスで作られた革命歌「マリアンヌの回復(la Guérison de Marianne)」まで遡るということです。マリアンヌのイメージは、上記のロゴマークの他、ユーロ硬貨や郵便切手にも用いられていて、郵便切手のマリアンヌは、大統領が代わるたびにデザインが変わります。また、フランス国内の市役所や公立学校などの公的な建物には、マリアンヌの胸像が置かれています。この胸像にもさまざまなデザインがあり、それを制作する際のモデルには、ブリジット・バルドー(Brigitte Bardot)、カトリーヌ・ドヌーブ(Catherine Deneuve)、イネス・ド・ラ・フレサンジュ(Inès de la Fressange)など、フランスを代表する女優、歌手、ファッション・モデルが選ばれています。最新のマリアンヌのモデルは、女優のソフィ・マルソー(Sophie Marceau)ですね。ウジェーヌ・ドラクロワ(Eugène Delacroix)の有名な絵画『民衆を導く自由の女神(La Liberté guidant le peuple)』(↓)に描かれた女神も、マリアンヌとされています。 この絵画は、ウィキペディア・フランス語ヴァージョンのマリアンヌの項目でも、在日フランス大使館ホームページのマリアンヌのページでも紹介されています。私は長い間、この絵は1789年のフランス革命を描いたものだと信じていたのですが(←お恥ずかしい次第ですw)、今回調べてみたところ、1830年の七月革命(La Révolution de Juillet)を主題としたものでした。王政復古で復活したブルボン朝を打倒し、ルイ=フィリップの「七月王政」を開始した革命です。※      ※      ※さて、皆さまご存知のように、アメリカ・ニューヨークの「自由の女神像(Statue de la Liberté)」は、アメリカ合衆国独立100周年を記念して、フランス国民がアメリカに寄贈したものです。上のドラクロアの絵は、この像のモデルの一つになったそうです。確かに、右手を挙げているところなどは同じですね。ずっと小ぶりですが、「自由の女神」はパリにも複数存在します。セーヌ川にかかるグルネル橋のたもとには、パリに住むアメリカ人たちが贈った「自由の女神」があり、リュクサンブール公園(Jardin du Luxembourg)にももう一体あります。「それらも『マリアンヌ』と呼ぶのだろうか」と思い、何人かのフランス人に聞いてみましたが、そうは呼ばないとのことでした。しかしレピュブリック広場(Place de la République)にも、デザインの異なる像が一体あって、こちらは「マリアンヌ像」と呼ばれています。そう言えば、東京・お台場にもありましたっけ。まあ、それは「マリアンヌ」とは・・・・・・呼ばないでしょうねw。

彼女は「帽子」をかぶってる(Elle porte un chapeau/une casquette)

2018/10/14  -ブログ

こんにちは。バゲットです。 すごく幼いころ、まだ保育園にも通っていない4歳か5歳のときでしたが、些細でありながら、今でも鮮明に覚えている、ある経験をしました。曇った日の午後、私は一人で家にいました。私は水を飲もうと、水道の蛇口をひねりました。そして透明のコップに流れ込んでいく水を見ながら、ふと思ったのです、「なんでこれを『みず』って言うのだろう」と。さらに思いました、「これを『みず』と呼んでいるのは、このあたりの人たちだけなんじゃないだろうか」、「東京の人たちは全く違う言い方をしていて、私が『みず』と言っても、彼らには何のことだか分からないんじゃないだろうか」。そう考えたら、なんだかすごく不安な気持ちになって、誰か家族が家の近くにいないかと、私は庭に出ました。しかし、庭の横を登ったところにある畑にも、庭の向かいの山の下の畑にも、誰もいません。私の家は農村地帯の集落から少し離れた、奥まったところにあって、隣の家まで100メートル、その隣の家までは200メートルもあります。私の近くには誰もいません。そのときの混乱と不安と孤独感。まさに「世界」が「崩壊」して、たった一人で放り出されたような気がしました。その後、大学に入って言語学を勉強し、上記の私の体験が、スイスの言語学者フェルディナン・ド・ソシュール(Ferdinand de Saussure)の言う「記号の恣意性(しいせい/arbitraire du signe)」に関するものだと知りました。ここで「恣意性」とは「必然性=根拠がない」ということで、つまり、水道の蛇口をひねると出てくるあの透明な液体を、「水」と呼ばなければならない必然性=根拠はないのです。あの液体は、英語で言うように “water” と呼んでもいいし、フランス語で言うように “eau” と呼んでもいい。あるいは「みず」ではなく、「まず」でも「むず」でも、「みじ」でも「みぜ」でもよかった。それを私たちはたまたま「みず」と呼んでいる、ということです。※      ※      ※さて、実は、ソシュールの言う「記号の恣意性」には二種類あります。つまり上記とは別の「恣意性」もあって、換言すれば、単語=言語記号はもう一つの「必然性=根拠がないこと」を持っているのです。外国語の学習者にとっては、こちらの方がずっとやっかいなのですが、それは、単語の意味する範囲には根拠がない、ということです。たとえば、一般に膝下から腿ぐらいの高さで上面が平らになっていて、地面や床に置いて人間がその上に座るための道具を、日本語では「イス」と呼んでいます。しかしそうした道具を一括して、同一の単語で意味しなければならない必然性=根拠はないのです。実際フランス語では、上の定義を満たす道具は、“chaise(椅子)”、“fauteuil(肘掛け椅子)”、“tabouret(スツール)”、“divan(背・腕のない長椅子)”、“canapé(ソファ)“など、たくさんあって、それぞれの単語が全く別のものを指しています。あるいは「帽子」。「彼女は“chapeau”をかぶってる」なら、こう(↓)です。 でも「彼女は“casquette”をかぶってる」なら、こう(↓)。全く違いますね。 このように、日本語の単語が指している範囲と、それと対応しそうなフランス語の単語が指す範囲が全く違うことって、本当に、山のようにあるんですよね。まあ、それがフランス語(あるいは他の言語)を勉強することの、「面白さ」でもあるわけですが。

フランスの祝日(Fêtes et jours fériés en France)

2018/10/09  -ブログ

こんにちは。バゲットです。 日本は「国民の祝日」が年間16日もあって、世界で三番目に多い国だそうです。日曜日と重なったときの「振替休日」や、「祝日」に挟まれた平日を休日とする「国民の休日」も考慮すれば、順位はもっと上がるのかもしれません。私が10代のころは年間11日〜12日だったのですが、働き過ぎの是正とか観光業の振興とかいろいろあって、「祝日」の数はどんどん増えました。今のところ六月には一日もありませんから、近いうちにもう一日増えるのではないかと期待している方も、いらっしゃるのではないでしょうか。では、フランスの「祝日(jours fériés)」事情は、どうなっているのでしょうか。ウィキペディア・フランス語ヴァージョンの「フランスにおける祝祭日(Fêtes et jours fériés en France)」の項目によれば、フランスの祝祭日は年間に11日あります。「世俗祭(Fêtes civiles)」と「宗教祭(Fêtes religieuses)」に分類され、「世俗祭」は、「元旦(Jour de l’An=1月1日)」、「メーデー/労働の日(Fête du Travail=5月1日)」、「第二次世界大戦戦勝記念日(Fête de la Victoire=5月8日)」、「革命記念日(Fête nationale française=7月14日)」、「第一次世界大戦休戦記念日(Armistice=11月11日)」の5日です。「元旦」は単に一年の始まりというだけですが、フランス革命で1日、世界大戦の終戦で2日と、歴史上極めて重要な日が祝日になっています。個人的に興味深いのが、「メーデー」。19世紀の末、アメリカの労働組合(後の「AFL/アメリカ労働総同盟」)が、一日8時間労働を求めてストライキを開始した日だそうで、現在ではOECD(経済協力開発機構、フランス語ではOCDE)加盟国のほとんどを含む、80以上の国で祝日になっているそうです。 一方、「宗教祭」は「復活祭の月曜日(Lundi de Pâques=移動祝日、18年は4月2日)」、「キリスト昇天祭(Ascension=移動祝日、同じく5月10日)」、「聖霊降臨祭の月曜日(Lundi de Pentecôte=移動祝日、同じく5月21日)」、「聖母被昇天祭(Assomption=8月15日)」、「諸聖人の祝日(Toussaint=11月1日)」、「クリスマス(Noël=12月25日)」の6日です。当然、すべてがキリスト教の祭日です。お恥ずかしいことに私はかなり年齢を経るまで知らなかったのですが、イエス・キリストが刑死したのが金曜日で、復活したのが日曜日。それを祝うのが「復活祭」で、翌日が休日になるのですね。※      ※      ※以上のように、フランスの祝日はそのほとんどが、歴史的・宗教的に重要な意味を持った日です。ひるがえって、ここ日本では、「みどりの日」、「山の日」、「海の日」など、休日を増やすためだけに作ったとしか思えない祝日もありますし、「建国記念の日」(=紀元前660年、神武天皇が即位したとされる日)のように、「ちょっとヤバそうw」というか、国民の間で意見が分かれそうな祝日もあります。まあ、日仏はそれぞれ異なった歴史と国内事情を抱えているわけで、「どちらが良い」という問題ではないわけですが、改めて「お国柄の違い」を感じますね。

ブドウを摘む(faire la vendange/les vendanges)

2018/10/03  -ブログ

こんにちは。バゲットです。 何度か書いたように、私は若いころボルドー(Bordeaux)に留学していました。皆さまご存知の通り、ボルドーは、フランスではブルゴーニュ(Bourgogne)と並ぶワインの名産地です。大学は市街地からバスで20分ほどの郊外にあるのですが、9月の下旬に現地に到着してしばらくして、周辺に、大きな畑一面に植えられた低い果樹らしきものがたくさんあることに気づきました。「一体、何の木なのだろう」と不思議に思っていたところ、それがブドウの木であることを教えられ、ひどく驚きました。私は、ブドウというものは、ツルが絡まった高い棚があって、そこからぶら下がっているとばかり思っていたからです。留学生仲間で、東京のデパートのワイン売り場で働いていたという女性によれば、日本は雨が多く湿度が高くてブドウが腐ってしまうから、それを避けるために「ブドウ棚」を作っている、ということでした。さて、ブドウは秋に収穫します。ウィキペディア・フランス語ヴァージョンによれば、フランスでは伝統的に9月〜10月です。「ブドウを摘む」をフランス語で ’faire les vendanges’ と言いますが、これは「ワインの生産のためのブドウの収穫(la récolte du raisin destiné à la production du vin)」を指す表現で、「食用ブドウ(raisin de table)」の収穫は含みません。フランスでは栽培されるブドウの95%以上が、ワインの製造に当てられます。収穫方法は「機械摘み(vendange mécanique)」と「手摘み(vendange manuelle)」の二種類があって、ワインの質とコストを考慮して選択します。「機械摘み」は、トラクターのような「ブドウ摘み機(machine à vendanger)」を使って行います。コストは安くなりますが、「ブドウを選別しながらの収穫ができません(la récolte n’est pas sélective)」し、「熟していない房や痛んだ房が混ざります(mélange des grappes plus ou moins mûres, voire abîmées)」。そのため、出来上がるワインの質は「並み(qualité courante)」になってしまいます。 他方「手摘み」では、労働者(vendangeurs)がハサミを使って、一房ずつ収穫します。高級ワイン(vins de qualité supérieure)とスパークリングワイン(vins effervescents)を作るには、「手摘み」でなければなりません。※      ※      ※このように、高級ワインは「手摘み」でなければ作れませんが、その場合、作業員は一日中、中腰で働くことになって、相当な重労働です。報酬はほとんど最低賃金(SMIC=2018年は時給9,88ユーロ)。しかも仕事は一年中あるわけではなく、秋限定の季節労働です。当然、フランス人で従事しようとする人は少なく(せいぜい学生のアルバイトだけ)、主力は東欧や北アフリカからの季節労働者(saisonniers)です。近年はどこのブドウ栽培農家(viticulteurs)でも、「手摘み」のための労働者を集めるのに苦労しているようです。今年の春に見たニュースでは、イチゴ(fraises)の収穫も季節労働者が足りなくて困っているということでしたから、フランスの農業全体が抱える構造的問題なのかもしれません。もちろん、日本人が働くことも可能ですし、実際に働いたという人も、私は何人も知っています。今年はもう間に合いませんが、興味があって体力に自信のある方は、フランス大使館に問い合わせてみたらいかがでしょう。

トリュフを食べたことはありますか?(Vous avez mangé de la truffe ?)

2018/09/22  -ブログ

こんにちは。バゲットです。 「恵まれない階層(classe défavorisée)」に属する(?)多くの男性がそうであるように、私は料理のことはほとんど何も知りません。ところがこのことには意外なメリットがあって、私は高級フランス料理を食べても(めったにありませんがw)、街の定食屋さんで700円のランチを食べても、100グラム95円の豚肉を買ってきて自分で焼いて食べても、味の良し悪しが全く分からないのでw、同じように幸せな気分に浸ることができるのです。そう思うと、少しだけ得したような気もします。他方で当然、デメリットもあります。主観的に最も重大なのは、自分が何を食べているのかが分からないことです。たとえば、「世界三大珍味」と言われる、フォアグラとキャビアとトリュフ。私も、それなりに高級なフランス料理を食べることはたまに(てか、「まれに」w)あるので、フォアグラは食べたことがあるはずです。でも何だか分からずにただ食べただけで、「これがフォアグラだ」という十全たる認識をもって味わったことは、一度もありません。だから「フォアグラ」と言われても、どんな味なのかよく分からない。キャビアについても同様で、あの黒いツブツブには見覚えがありますから、食べたことはあると思います。しかし「キャビアの味」と言われても、ピンと来ないのです。さらにトリュフに至っては、食べたことがあるのかどうかさえ分かりません。調べてみると「スライスして料理にトッピングする」とあります。ステーキの上に乗ったそれらしきものを食べたことは何度かありますが、あれがトリュフだったのでしょうか。※      ※      ※前置きが長くなりましたが、今回のテーマは、その「トリュフ(truffe)」。日本で「秋の味覚」の代表と言えば、キノコです。トリュフもキノコ(champignon)の一種ですから、秋が旬かと思って調べてみると、その辺はなかなか複雑で、種類によってまちまちです。ウィキペディア・フランス語ヴァージョンによれば、有名なペリゴール産黒トリュフ(truffe noire du Périgord)の「旬」(pleine maturité=「成熟期」)は1月半ば〜3月末。他の種類もおおむね秋から冬が旬ですが、夏に成熟する種類もあるようです。紀元前2600年ごろ、古代エジプトで珍重されていたそうですから、歴史は相当に古い。ところが古代ローマ以降は長い間忘れ去られて(もちろん、庶民は食べていたのでしょうが)、ルネッサンスのころになって再び人気が沸騰します。フランスではフランソワ一世(在位1515〜1547)の宮廷で供されていたとか。 地中で形成されるので、昔は雌ブタを使って探していました。35年ぐらい前に私がフランス語学校で見た教材用ビデオでも、ブタが探していました。トリュフの香りが雄ブタのフェロモンに酷似しているため、雌ブタは放っておいてもトリュフを見つけて掘り出すからです。でもブタはトリュフを見つけると食べてしまうので、現在では主にイヌを訓練して使っています。※      ※      ※さて、日本の松茸と同様、トリュフもいろいろな大学や企業、研究機関が人工栽培技術の開発に向けてしのぎを削っており、種類によってはすでに成功しているものもあるそうです。現在のようにトリュフを「スライスしてトッピングする」のは、値段が非常に高価だから、そのような食べ方をするのでしょう。いつの日かトリュフの栽培技術が確立して、三個100円(!)くらいまで値段が下がったら、そのときは一体、どんな食べ方をするのでしょう。ちょっと興味がありますね。あなたなら、どうしますか?

ジビエは食べたい?(Tu veux manger du gibier ?)

2018/09/16  -ブログ

こんにちは。バゲットです。 少し前ですが、「朝日新聞」でカラスに関する記事を読んでいて、目を疑うような一節に遭遇しました。「フランスではジビエ(gibier=獲物)の一つとしてカラスを食べる」と言うのです。初耳だったので驚いてネットで調べてみると、確かに日本のフレンチ・レストランで、カラス料理を出しているところはいくつかあるようです。さらに調べると、ヤフー・フランス(Yahoo ! France)の質問コーナー(Questions / Réponses)で、「カラスをおいしく料理する方法は(Comment bien cuisiner un corbeau)?」という質問が見つかりました(https://fr.answers.yahoo.com/question/index?qid=20110810105656AAXicfW)。回答には具体的なアドヴァイスもありますから、本当にカラスを食べる人もいるのかもしれません。他方、「それって食べられるの(Ça se mange)?」、「それは全く食べられません(C’est totalement immangeable)」とか、「戦争中で田舎に肉が全く無かったとき、カラスを食べたとおばあちゃんが言っていた(Pendant la guerre quand ils n’avaient aucune viande à la campagne ma grand-mère disait qu’ils mangeait les corbeaux)」などの回答もあります。また、材料(ingrédient)に「ワニの目玉一個(1 œil de crocodile)」など、明らかにジョークとわかる「レシピ(recette)」も複数あります。少なくとも、「一般に食されている」ということではないようですね。「レコール・ド・フランセ」でも、三人の教師に聞いてみましたが、三人とも「カラスは食べたことがない」とのことでした。※      ※      ※さて、ジビエ(gibier)はフランス語で「獲物」のこと。ウィキペディア・フランス語ヴァージョンによれば「その肉を消費したり売ったりするために狩られる、陸生野生動物の総体(l’ensemble des animaux sauvages terrestres que l’on chasse pour en consommer ou vendre la viande)」です。代表的なものとしては、鳥類(gibier à plumes=羽根のあるジビエ)では、マガモ(colvert)、ヤマウズラ(perdrix)、キジ(faisan)、キジバト(tourterelle=ヤマバト)など、 獣類(gibier à poils=毛のあるジビエ)では、野ウサギ(lièvre)、イノシシ(sanglier)、シカ(biche)、ノロシカ(chevreuil)、ダマシカ(daim)などがあります。 野生動物はエサが少なくなる冬に備えて栄養を蓄えますから、ジビエの「旬」は秋、ちょうどこれからの季節です。日本でも近年はちょっとしたブームになっていて、ジビエ料理を出すフレンチ・レストランも増えているとか。食材の多くはフランスから輸入しているようですが、中にはシェフ自ら狩りに出かけるお店もあるそうです(http://la-chasse.org/index.html)。大量に飼育される豚・牛・鶏と比較すると、どうしても値段は高価になりますが、興味のある方は試してみたらいかがでしょう。※      ※      ※何度も書いたように、私は千葉の農村地帯で育ちました。子供のころ、親戚のお爺さんで狩猟を趣味にしている人が二人いて、ときどき家に、獲物(=ジビエ!)のお裾分けを持ってきてくれました。私も食べましたが、とくに美味しかったとは思いません。でも、まあ、この飽食の時代に、わざわざ自分で山に分け入って、何時間も山道を歩いて、とうとう仕留めた「獲物」は、本人にとっては「格別の味」なのかも知れませんね。

ユニークなヴァカンスの過ごし方(des manières originales de passer les vacances)

2018/09/03  -ブログ

こんにちは。バゲットです。 フランスの国営テレビ「フランス 2」では、毎年夏のヴァカンスシーズンになると、ユニークで刺激的なヴァカンスの過ごし方をルポします。去年はヨルダンの砂漠の真ん中で夜空一杯の星々を眺める家族などが登場しました。今年もなかなか興味深い休暇の過ごし方が報告されましたので、ここでいくつか紹介しておきましょう。まず「サイクリング/ツール・ド・フランス走者たちのコースでの休暇(Cyclisme : vacances sur la route des coureurs du Tour de France)」と題された8月8日のルポルタージュ。 フランスで毎年7月に開催される世界最大の自転車レース「ツール・ド・フランス(Tour de France=フランス一周レース)」。レースの行程にほぼ毎年選ばれているピレネー山脈のツールマレー峠(Col du Tourmalet)は、近年、夏になるとアマチュアのサイクリストたちで賑わいます。10年前はほんの一握りだったそうですが、現在では一日に300人以上。彼らはプロの選手たちと同じジャージを着て、麓の町から標高2,115メートルの峠まで、自転車を漕いで登って行くのです。インタヴューに答えた人は、「私のスピードはプロの選手たちの10%ですね(Je pense que je vais à 10% de la vitesse des professionnels)」と笑っていました。彼らは地元のフランス、スペインはもとより、世界の各地からやって来ます。日本人もたくさんいるそうです。ルポではフィリピンからの団体客が紹介されていましたが、総費用は飛行機代別で2,500ユーロ(=30万円強)。麓の町には貸し自転車屋があって、いろいろなタイプの自転車から自分に合ったものを選べます。ピレネー山脈最高峰の一つに登った達成感と、そこからの眺めは格別です。体力的にハードルは高そうですが、脚力に自信のある方は挑戦してみたらいかがでしょう。※      ※      ※もう一つ紹介したいのが8月10日のルポで、タイトルは「遊牧の精神/ロバの背中での夏(Esprit nomade : l’été à dos d’âne)」。 アルプス山脈の西に広がる丘陵地ヴェルコール(Vercors)を、ロバと一緒に4日かけて踏破します。ロバはキャンプのための荷物を運び、参加者たちは手綱を引いて歩きます。時速は4キロ。夜は泉の近くにテントを張って休むのですが、「泉」と言っても山上ですから、水量は少ない。ロバに水を飲ませて、飲料水と料理用の水を確保するだけで、シャワーを浴びることはできません。翌日は早朝に起きて、荷物をまとめてロバの背に乗せ、また歩く。山道なので疲れて、足取りは重くなる。それでも彼らは楽しそうです。30代半ばぐらいの女性は、こう言っていました、「しがらみを忘れて(il y a pas d’attaches)、何も考えません(on pense à rien)、家のことも日常のことも考えません(on pense pas à la maison, au quotidien)、ロバを引いて、歩いて、風景を楽しむだけです(il y a qu’à s’occuper de l’âne, la balade, profiter des paysages)」。こちらは普通の体力があれば、ついて行けそうです。皆さま、来年の夏には、考えてみてはいかがですか。

昆虫を食べる(manger des insectes)

2018/08/25  -ブログ

こんにちは。バゲットです。 数年前から、新聞やネットで、ときどき昆虫食についての記事を目にするようになりました。将来の人口爆発=食料難を見据えて、全世界に豊富に存在する昆虫が、「新たな」食料として注目されているそうです。「新たな」と書きましたが、実際には人類の誕生(25万年前とも言われます)以来、長い間、昆虫は人間の食料の重要な部分を占めていました。現代でも世界で25億人が昆虫を食べているそうで、特に熱帯地域では、アジア、アフリカ、南米と、大陸を問わず昆虫食が一般に行われています。たとえば中央アフリカの人々は毎年何千トンものイモムシを食べています。日本でも、ハチの子やイナゴの佃煮を食べますね。そう言う意味では、「新たな食料」というより、「伝統的な食材」とでも言った方がよいのかもしれません。さて、フランスでも昆虫食(entomophagie)は、最近、一部の人たちの間でブームを呼んでいます。「フランス2」のテレビニュースでも、バッタやセミを使った料理についてのルポを、何度か見たことがあります。料理研究家の方たちは、ビスケットに入れるとか、フライパンでソテーにするとか、フライにするとか、いろいろと工夫をしているようです。今回、ネットで探してみたら、食用昆虫(insectes comestibles)の通信販売のサイトが出てきました(http://www.insectescomestibles.fr/)。 上(↑)のサイトのブログ記事によれば、ヨーロッパでも昔は普通に昆虫を食べており、古代ギリシア・ローマ人たちは「蜂蜜で包んだコオロギ(criquets enrobés de miel)」や「甲虫の幼虫(larves de coléoptères)」が大好きだったそうです。中世のフランスでは「ミールワーム(vers de farine)」が一般に食されており、南フランスでは「カイコ(vers à soie)」を食べていました。ポンパドゥール夫人(Madame de Pompadour)は客人たちを「コガネムシの衣揚げ(beignets de hannetons)」でもてなしていたとか。先日のテレビニュースでは、ハエの幼虫=ウジ虫を原料に、養殖魚のエサを製造しているベンチャー企業が紹介されていました。調べてみたところ、ウジ虫は大豆に代わる家畜の飼料としてかなり有望視されており、新会社もいくつか設立されているようです。※      ※      ※さて、私は世田谷のマンションの11階に住んでいます。毎年夏になると、どういうわけか、ベランダでセミの死骸をいくつも見つけます。普通セミがとまっている木は2階、3階ぐらいの高さでしょうから、一体何のためにわざわざ11階まで飛んで来て死ぬのか不思議でなりません。その方が天国に近いとでも思っているのでしょうかw。見つけるたびにゴミばさみで拾って捨てていますが、こちらとしてはいい迷惑です。私も蜂の子やバッタなら食べられそうな気がしますが、あんな死骸を見てしまうと、セミは絶対にムリですねw。

フランスのルパン三世(Lupin Ⅲ en France)

2018/08/15  -ブログ

こんにちは。バゲットです。 皆さまもご存知のように、今年のカンヌ映画祭(Festival de Cannes)では、是枝裕和監督の『万引き家族』が最高賞のパルム・ドール(Palme d’Or)を獲得しました。私は見ていないのですが(DVDになるのを待ちます)、タイトルの通り万引きで生計を立てる家族の話だそうで、街の商店主の方や警察関係者の方は、さぞかし苦々しい思いをされていることと思いますw。さて、万引きというか、泥棒界のチャンピオンと言えば、アルセーヌ・ルパン(Arsène Lupin)。フランスの作家モーリス・ルブラン(Maurice Leblanc)が創造した「怪盗紳士」です。2004年にルパン生誕100年を記念して制作された映画(『ルパン』)があって、公開当時はかなり話題になったので、最近、何の気なしに見てみました。映画自体はお話がゴチャゴチャしていて面白くなく、私は途中で放棄してしまいました。しかし印象的だったのは、作中のアルセーヌ・ルパンが日本のルパン三世とよく似ていることです。細身の身体、細面の顔ともみ上げ、微笑み方など顔の表情、ドタバタ調の走り方など、本当によく似ています。同様の指摘はネットでいくつも見つかりますから、両者の類似は私の単なる「主観」ではないでしょう。「ルパン三世はフランスでも有名なのか」と思い、調べてみて、さらに驚愕しました。フランスにルパン三世は「存在」しなかったのです!『ルパン三世』シリーズの原作者モンキー・パンチは、当初「ルパン」という名前の使用について、モーリス・ルブランの遺族から許可を得ておらず、そのため後になって著作権上の問題が生じたそうです。そして結局、「ルパン三世」の呼称は日本国内でのみ用いてよいことになりました。で、さらに調べてみると、アニメ自体は、第一シリーズ(1971-72)全部と第二シリーズ(1977-80)の一部がフランスでも放映されています。ところが作品のタイトルもルパンの名前も変更されているのです。 ルパン三世のフランスでの名前は「エドガール・ド・ラ・カンブリオール(Edgar de la Cambriole)」、伝説の怪盗紳士「ガスパール(Gaspard)・ド・ラ・カンブリオール」の「孫(petit-fils)」という設定です。宮崎駿監督の『カリオストロの城(Le Château de Cagliostro)』でも「エドガール」になっていました。なお、「ラ・カンブリオール」は、フランス語で「泥棒」という意味の普通名詞です。他の登場人物の名前もフランス風に変えられていて、五右衛門は「ゴエモン(Goemon)」のままですが、次元は「イジドール(Isidor)」、不二子は「マガリ(Magali)」、銭形警部は「ガストン・ラコーニュ(Inspecteur Gaston Lacogne)」になっています(註)。さて、モーリス・ルブランが逝去したのは1941年。著作権(70年)は2011年の末に失効しており、現在ではフランスでも「ルパン三世(Lupin Ⅲ)」の名前を使うことに障害はありません。そう言えば、銭形警部が出向したICPO(国際刑事警察機構)の本部が置かれているのも、フランスのリヨン(Lyon)です。「ルパン三世」のアニメはフランスではあまりヒットしなかったようです。でも、「ルパン」の名前を出せば、ひょっとしたら人気に火がつくかもしれません。 註・日本のアニメの登場人物の名前をフランス風の名前に変えることは、フランスでは一般的に行われていることです。

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