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キャベツを植えに行く(aller planter ses choux)

投稿日:2017年10月23日

こんにちは。バゲットです。

若い方は聞いたことがないかもしれませんが、私が子供の頃(1960〜70年代)、漫画やテレビドラマで、「ニワトリでも飼って余生を過ごせ」というセリフをよく目/耳にしました。
大体のパターンとしては、たとえば政界のフィクサーのような「巨悪」が、政治家や高級官僚を操って日本の政治をほしいままにし、私腹を肥やしている。で、悪事が露見しそうになったり、一部が露見してスキャンダルになったりしたとき、手先として使っていた者にすべての責任を押しつけ、冷たく言い放つのです、「ニワトリでも飼って余生を過ごせ」と。そしてそのように命じられた、まだ現役バリバリの政治家や官僚は、言葉もなく、無念そうにうつむく・・・・

ニワトリの画像

表舞台から去って一切の関係を絶ち、田舎に引きこもって自給自足に近い生活をするのは分るのですが、なぜ、「キノコ」とか「大根」とか「ほうれん草」ではなく、「ニワトリ」なのでしょう。千葉の山奥の農家に生まれ、実際に祖母が20羽ほどのニワトリを飼っていた私は、その言葉を目/耳にするたびに、分るような、分らないような、不思議な気分になったものでした。
さて、比較的最近のことですが、フランス語にも類似の表現があることを知って、驚きました。
「自分のキャベツを植えに行く(aller planter ses choux)」。手元の仏和辞典には、「田舎に隠遁(いんとん)する」「隠居する」とあります。

キャベツの画像

ネットで検索してみると、出てきました(↓)。
http://www.expressions-francaises.fr/expressions-p/1875-planter-ses-choux.html
上のサイトによれば、「自分のキャベツを植える」が意味するところは、「田舎に住む(vivre à la campagne)」「自分の庭を耕す(cultiver son jardin)」、転じて「定年退職する(prendre sa retraite)」「現役を引退する(quitter la vie active)」。
17世紀の終わりには、「自分のキャベツを植えに行かせる(envoyer quelqu’un planter ses choux)」で、「(人から)仕事、職務を取り上げる、すなわち人を解任する(le priver de son emploi, de ses fonctions à savoir le destituer)」という意味になりましたが、現代ではそのような「法律的概念(notion juridique)」は完全に失われた、とあります。昔は「ニワトリでも飼って・・・」と同じような意味だったのですね。
使用例として挙げられているのは、マルセル・パニョルの『父の大手柄』(1957年)の一節。「三年後、彼は定年退職した(il prenait sa retraite)・・・そして喜びに微笑みながら、彼は言った、“私もようやく自分のキャベツを植える(planter mes choux)ことができるよ”。」
※      ※      ※
ところでこの表現、何人かのフランス人に聞いてみましたが、「知らない」という人が多いようです。仏和辞典には載っていますが、実際にはあまり使わないのかもしれません。

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